<漫画の描き方>


本を作るということになっている以上、書きたい話がすでにあるという想定で進めます。
そして、ここでは「漫画の描き方」といっても、テクニカルな内容ではなく、考え方のお話です。
こんなんできるわい!という人はすっ飛ばしてください。

まず、「書きたい内容があるんだけど、どうやって形にしていいかわからない」という人が多いのではないでしょうか?
ぶっちゃけ、漫画を描いたことがない人にとっては、コマ割りすらも未知の世界だと思います。
そんな、漫画初心者の人におすすめな飛び道具が、4コマです。

「4コマってギャグ漫画じゃん」って思う方もいるかもしれませんが、4コマは“起承転結”がシンプルに表現できる魔法のコマ割りです。
大きな流れを追っていくための、一つ一つのエピソード・シーンを基本的に4コマで進めていくというテクニックがあります。

例えば、

こんな感じで佐藤・吉田・田中の恋の行方を描くとか。
あとは、雰囲気のある仕上がりにしたいなら、1pに4コマの割り方にすると、比較的ギャグ感が抑えられます。

こういう割り方

例えば、ネームの段階で4コマ割りを使っておいて、実際にページにするときにはコマの流れや大小を変えるという方法もあります。

次に、実際に中身を描いていく段階の話なんですが、具体的に誰に対して描いているかを意識すると良いと思います。
なぜかというと、不特定多数に向けて何かを訴えようとしても、どこから説明すればいいか、
キャラのどういうところが好きか、笑えるのが好き?暗い話が好き?エロ平気?など、話を形にしていく段階で非常に迷いが生じます。
あと、具体的なターゲットが無いと、逆に誰得?な中途半端な話になりがちです。

で、「誰を読み手に想定するか」ですが、最初のリサーチでなんとなく把握した内容も踏まえつつ、
一番手っ取り早いのが、同じジャンルの身近な知り合い、もしくは自分をペルソナ(※)として、
その人を萌えさせる&感動させるためにはどう見せていくかを考えてみると良いかと。
(※ペルソナ:企業が商品などを考案する際に、より具体的なターゲットをイメージするためのつくる架空の人物のこと。
 その人の趣味や趣向を事細かに設定し、その人にどう訴えかければ響くかという点を考えながら商品を開発していく)


例として具体的な手順を追っていきます。

読む人の具体像
【想定:ラッキードッグ1でイヴァン×ジャンのストーリー漫画本を出す場合(若干適当です)】
<ジャンル傾向>
・ 本編はもちろんプレイ済み、派生もしっかり追う人が多い。
・ どちらかと言うと、スタイリッシュな絵・ストーリー展開を好む人が多い。
・ 公式がそうなので、コミカルの織り交ぜられたシリアスや、パロネタにも寛容。
・ 歴史・武器・科学・経済など、知識ネタもわりと好き。
・ ゲームが18禁だから、18歳以上。

<今回の本で具体的に想定する人物像=自分と仮定して>
・ イヴァンとジャンの対等&成長のノリシロがある感じが好き。
・ ジャンは男前で一枚上手なのがいい。
・ 少年漫画も好き。
・ 二人の世界より、組織の中での二人という感じがいい。

とりあえず、作品に関する知識がしっかりした人が多いから、もろもろのお膳立て(キャラクターのあらましや時代背景の説明など)は端折って、
いきなり本題に入っても大丈夫。これまでにいろんな二次創作を読んでいるだろうから、ちょっと意外な切り口から入って興味を引こう。
ダチの雰囲気を出したいから、普通の日常シーンとかもちょくちょく入れて、あとは、ギャグ絵でジャンがイヴァンをおちょくるシーンも入れてもいいかも。
イヴァンの見せ場は絶対大ゴマで入れるとして……。糖分少なめ、鉄分多め……と。最後は引きのコマを入れて、ここで他のキャラも全部だそう。

ってな感じで、話の具体な形が見えてくると思います。

漫画を描くにあたって気をつけたほうがいいのは、とにかく「ひとりよがり」にならないことです。

<よくあるミス>
■話を考えるときに自分の頭にはあるのに、漫画にちゃんと落とし込めていないケース
・ 恋に落ちた理由がよくわからない(例:電車で暴漢に抗議した件に触ないまま、エルメスとの恋を描く“『電車男』”)
・ しょっちゅう企み顔で出てくる怪しげな人物がいるのに、結局何もしない(例:明智光秀が最後まで何もしない“大河ドラマ『信長』”)
・ オリジナルエピソードなのに、設定の話を一切しない(例:なんで男だらけなのかが全く説明されない“よしながふみ版『大奥』”)
・ 伏線の回収をしない(例:謎の組織の正体がわからないまま最終回を迎える“名探偵コナン”)
など。

■キャラの描き分けができていない
読んでいて、誰が何をやっているかがわからないのは由々しき問題です。服や髪型にわかりやすい差がある作品なら良いのですが、
みんな同じ制服の学園ものなどでは、誰が何をやっているのか、描いている人しかわからない可能性もあります。
その場合は、後ろ姿だけの人物に話しかけるとき、「お前何やってんだよ」ではなく、「佐藤、お前何やってんだよ」といった感じで、
不自然ない範囲でセリフに意図的に名前を入れるなどの親切さが必要かもしれません。
また、人物のパーツだけしか映らない&前後の流れから誰なのかが判別しにくいコマの場合、
服や髪型、キャラによっては刺青やピアスなどの特徴を盛り込むなど心がけたほうがよいでしょう。

とにかく、初めて読む人にもちゃんと伝わるようなストーリー展開、画面作りを意識することが大切だと思います。

<見せ方のテクニック>

絵の描き方などについては、いくらでも専門的な本が出ていると思うのでそちらを御覧ください。私もわかりません、すいません。ここで紹介するのは構成の話です。

【左上の話】
 雑誌・本にとって左上はとても大事な場所です。右開きの和書の場合、人がパラパラとめくるときに一番目に留まりやすいのがこの「左上」と言われています。


この「左上」が活躍するのが、即売会や書店で手にとってもらい、パラ見をされたときです。絵でも分かる通り、パラ見の動きでは右ページに描かれたものはほとんど目に入りません。また、手より下にある部分もあまり目には入りません。
ここがセリフばっかりだったり、抜けの白地ばかりだと、手に取った人の心にあまり響かないので、左上のコマには、意図的に良い絵を持ってくるなどして気を使いましょう。


【ノド側の話】

本にはノドというものがあります。版形が小さいほど、ページ数が多くて厚いほど、ノド側に描かれたものは読みにくくなります。
セリフ・人物の顔などはこのノド側からある程度離して描くようにしましょう。


【ページネーションの話】
ページネーションというのは、前後の流れを意識しながら文字や絵、雑誌なら写真などを効果的に配置して、読み手を本に引きこむための演出方法のことです。
例えば、雑誌などの場合、基本的には特集の最初のページは読者の興味を引くタイトルやキャッチと裁ち落としの写真が扉になっており、
そこから面白いネタや写真で畳み掛け、読者を引き込んだところで文字要素の多いコラムなどを入れています。
また、読者が初めて触れるような専門的な内容の場合は、最初のほうでその分野の基礎知識を丁寧に説明してから本題に入る構成になっています。
と、本来のページネーションの話はこのくらいにして、同人誌におけるページネーションの考え方について。

漫画というのは、見開きごとに世界が展開していきます。例えば、シーンの転換は見開きごとにしたほうがわかりやすいですし、
右ページの伏線を左ページでネタバレするよりも、次の見開きに持ってきたほうが印象的です。

例えば

はじめのコマで告白するというフリをしておきながら、もう左下におもいっきり結末が見えちゃってます。どんだけ早漏なのかと。
それでなくとも、こういう気になるコマは次の見開きのはじめとかに持ってくるようにしましょう。左下ばっかり気になっちゃって、全くコマを追う気になれません。

つまりこういうことです(例のひどさは置いといてください)。

また、つかみになる1p目は、続きが気になるようなキーワードや内容を盛り込んで、「ちょっとそれ、kwsk」と言いたくなるような感じにするのもひとつのテクです。
(元あったネームを使ったので、必ずしもこれが正解例とは言えませんが、例えばこんな感じです)


あと、こういうページ構成のルールの存在を絶対に知っておいたほうがいいのは、合同誌やアンソロジーを編纂する人です。
漫画の描き手にとって、片起こし(左ページ始まり)なのか、見開き始まりなのかは、ページ作りにとって非常に大切なことです。
作家指定があったにもかかわらず、台割都合でどっちから始まるかを無視して編纂し、小口を想定したタチのコマが全部ノドに飲まれている、
オチのコマが意図しない場所に入っているなんてことになれば、作家は泣き寝入りです。

漫画描きの青くなる様が目に浮かびます。


【ドヤゴマ】

ステーキも、毎食食べれば胸焼けします。
大ゴマ・ドヤ顔・過剰な効果のいわゆる“ドヤゴマ”は、ここぞというシーンのために取っておきましょう。
例えば、さっきのヅラ親父のコマ。次の見開きで祖父、次の見開きで叔父、次の見開きで兄、みたいに同じ構成で連続したらもう、
ゴレンジャーの登場シーンかっつー話です(ギャグならいいですが)。

まあ、こんなことはありえませんが。

あと、大した話しでもないのにやたらドラマティックに描くのも、控えたほうが良いかもしれません(ギャグならいいですが)。

厨二病っぽさ全開です。あと、こういう同じパターンのドヤゴマを何度も使うのも、読み手に「またかよ…」という印象を与えてしまうのでやめましょう。
「一生のお願い!」と同じです。

例を描くのがの楽しくなって若干本題を見失いそうになりましたが、何を言いたかったかというと、ドヤゴマはここぞというときに使うからこそ効果的なのです。
濫用は控えましょう。

つづいては表紙とタイトル
>>つづき